第六話  運命のギルド入会。
 
UOを初めて早一ヶ月。
ZAXの指導の成果もあり、
この頃になると、
フォードもそこそこ強くなりました。
ルーンとリコールの関係も覚え、
一人で出かけても「それほど」死ななくなりました。


…とは言っても、
まだまだスキルなどは完成しておらず、
スキルGMが一つもありませんでした。
前回述べたようにステータスは集中的に上げることが出来たのですが、
いかんせんスキルに関しては戦闘をしないと上がらないわけですから、
時間がかかります。


それでも開始一ヶ月で、
スキルGMが無いのは異常ですよね(笑)。
いかに、
スキル上げを重視してプレイしていなかった…ということでしょうか。






そんなある日…、
ZAXがある提案をしてきます。


「ねえ、フォード、ギルドに入らない?」


私は最初、
ZAXが言うところの『ギルド』というのは、
ファンタジーの世界における職人の集まりなどのことだと思っていました。
例えば戦士ギルド、魔法使いギルドなどの、
いわゆる職業組合のことを指している…と思っていたのです。


これはある一面、
間違っていません。
UOでもNPCたちが構成している、
そういうギルドは確かにありますが、
ここでZAXが話しているものとは違います。


ここで言うギルドとは…、
 なんていうんでしょうね、
私の一番近いニュアンスは、
サークルです。
これが一番、わかりやすいニュアンスだと思います。


あるいは、
いつも一緒に遊んでいるお友達グループに名前がついたもの…、
とでも言うのでしょうか。
そんな感じです。
他のネットゲームで恐縮ですが、
○ネでいうところの『血盟(クラン)』ですね。





当時のフォードは、
とりあえずZAXが一緒なら文句も言わない状態だったので、
OKと返事しておきました。





紹介されたのは、
ZAX同様ナイトメアに乗っているメイジの方でした。
この方がギルドマスター、
UOの世界では略して、GMと言います。


最初ZAXは、
「今度、ギルマスを紹介するね」
と言っていました。
私は『ギルマス=ギルドマスター』とは思わなかった…、
というかギルドマスター自体何のことかわかっていなかったので、
紹介されたときに、
「こちらがGMなの」
と言われて、
(いつになったら、ギルマスさんを紹介してくれるのかなあ…)
としばらく思っていました(苦笑)。


つまり、
ギルマスとは固有名詞だと思っていたのです。


ほんっと、
略語ってムズカシイデスネ。
ちなみに私は、
「w」の意味が
しばらくわかっていませんでした
(涙)。
語尾に「w」をつけるのが、流行ってんのかな?
と思ってたくらいです(爆笑)。


ご存知でない方のために説明すると、
語尾につける「w」は、
WARAIの略、
すなわち(笑)のことです。


例)
それってホントなの?(笑)=それってホントなの?w





さて。
このギルドマスター、
のちにわかるのですが、
自身がUO歴二、三ヶ月で始めたばかりの
結構経験の浅いプレイヤーということでした。


フォードは一ヶ月経ってもスキルGMが一つもないというのに…、
こいつぁ、すごいや!
と率直に思ったことを覚えています。





しかし、
このギルドというものに入って、
最初に私が感じたのが、
「仲間が増えた楽しさ!」というものよりも、
「束縛」でした(涙)。
これは案外、
よくあるケースのようで…。


今では理解出来なくもないのですが、
その当時はまだIRCもQもよくわかっていない頃でしたので、
それらのソフトを、
必ずインストールしておけとか、
UOに入ったらそれらのソフトは立ち上げておけとか、
狩りはギルドメンバーで行動しようとか…、
上げたらキリがありませんでした。





そんなメンバー構成は、
UO経歴の短いGM
経験は長い、しかしあらゆる物事に中立を保つ、FAT(本当にこういう名前だった!)
口数が異様に少ない、エイコム(キリンに乗ってました)
明らかに上級者なのに、なぜかわざと初心者ぶっているチェリー(職業不明…)
回線が遅いので、よく止まっていたナル(ヒーラーで看護婦!でした)
ギルドストーンを置くために、家を貸してくれていた、セシベル(やっぱりメア乗り)
そして新入りの、
ZAXとフォードです。



既にこの『年代記』では登場している、BessieとRicottaも、
この後すぐにフォードが勧誘して入ることになります。
ただアクト時間が合わなかったせいか、
ギルドに参加して活動することはありませんでしたが…。






さて、このギルド、
入った当初から、
とにかくむちゃくちゃでした(汗)。


これはあくまで、
当時のフォードの視点で…と言うことです。
UOプレイ時間も経験も浅かったフォードですが、
ギルドの面々はそうではありません。
フォードよりも数ヶ月早めにUOをはぢめたギルドマスターやZAXも、
その濃密な(!)活動と彼らの知的探究心の高さから、
ベテランに引けを取らないレベルでした。


つまりは、
このギルドで、
ぺーぺーなプレイヤーは、
フォードだけになります。





ベテランの中に新人が入ると、
様々なケースが考えられるとは思うのですが、
まず一番には…、
いぢりやすい
ってことですかね?(涙)


ログインしてHavenのベンチにいると、
大体、
GM、エイコム、セシベルがいて、
「狩りいくかー」
という、
のんきな口調に似合わない場所へと連れ出されました。






まあ、大体、
ヒスロスの
黒閣下部屋直行便ゲートが
出たのですが(汗)。


あ、そこのあなた、
「そんなの普通じゃん?」
って思ってはダメです(笑)。
その感覚は、イクナイですよ?
ちなみに、
その場所はどういうところかというと…、
こんな場所です。

明らかに死にゲートですね、これ。





これは私的意見なので…、
聞き流してもらっていいと思うのですが、
ヤングあるいは、まだヤング取れたての方を、
いきなり危険地帯に連れて行くのは、
私個人としては、あまり好きではないです。
あまり死んでばかりいると、
本当にUOがイヤになると思うんです。


確かに、死んでイヤにならない人もいますが、
イヤになる人だっているわけです。
それが毎日ともなれば…、
必然的にどういう心境になるかはおわかりですね?(涙)


「死んだくらいでへこむとかって…w
そういうヤツは、UOに向いてないし、
ネットでそういうんぢゃ、もたないね」
というふうに、
一体てめえは何様だ?
というくらい高い所から自分の価値観を押し付ける、
ちょっと勘違いしている方がいらっしゃいますが、

そういうのはイクナイですね。
あまりネット(あるいはネットゲー)ばかりしていると、
イクナイということです。
(※2004年夏の異常な暑さの中で書いているため、表現にややトゲが含まれています)





この当時、大して強くなかったにもかかわらず、
フォードは
連日連夜、上記のような場所に放り込まれ、
死にまくりました。
ヒスロス地下深くだけではなく、
蜘蛛城最下層、
デーモンテンプル、
ロング2Fなどにも連れて行ってもらいましたので、
回収出来ずに死体が腐ることなど、
日常茶飯事でした(涙)。


この頃、
ひそかに称号をあげて、
「いつかはLordになるんだ!」
(※本音・・・Lordになったら、ZAXが褒めてくれるかなあ)
とフォードは思っていましたが…。
こんなに死んでいては名声なんぞ上がるはずがありません。
はかない夢でしたね(涙)。






まだドラゴンすら、
一人でで倒せなかった時期です。





本当に、
「ギルド」というものが嫌になりました。





ただ、
ZAXが紹介してくれたギルドということもあるし、
顔見知りになったみんなの手前、
「おまえら、嫌すぎ」
などと言えるわけがありません。
「たぶん、自分が下手だから面白くないんだろうなあ」
と思っていました。


そうなってくると今度は、
どこであろうとも、
どうやったら逃げて生き残れるか?

を必死に考え始めました。
元来、負けず嫌いなので、
もう死ぬのが嫌になったのです。





こうなってくると、
必然的に「腕」が上がってきます。


今までZAXとはマンツーマン方式で、
「手取り足取り」的な部分が多かったのですが、
ギルドでの狩りは、
サバイバル的要素が濃くなりました。


この時の経験が、
後にフォードや女王が「生還者(サバイバー)」と呼ばれ、
どんな場所に行こうとも還って来る…、
という状態を生み出す遠因になったような気がします(笑)。


…まあ、
「PS第四段階に、赤ネームが突っ込んできたのでヘルプに来て!」
と言われて生産キャラで行ったこともありましたから、
多少回りに呆れられていましたが(汗)。
(※だって、生産修行中だったから涙)





他にも。
このギルドに入って、
はぢめてトレジャーハントに参加しました。
このギルドのトレハンの特徴は、
L5しか行かなかったことです(汗)。


トレジャーハントとは、
モンスターを倒してたまに手に入る地図を解読し
(※それ専用のスキルが必要になります)、
ある地点を掘ってお宝をゲットすることです。
このお宝を掘る時に、
地図レベル1〜5にあわせて、
モンスターが一斉に出現します。
当然、
レベル数が高いほど、
モンスターの強さも高くなります。


AoS以降、
マジックアイテムの恩恵もあるのでしょうが、
それ以前に比べてそれほどトレハンが難しく感じない…ような気がします。
私自身の強さが変化したせいかもしれません。


とにかく、
L5のトレハンしか行かなかったので、
経験のない私は、
「ああ、これがUOの宝探しなんだなあ」
と思い込むようになりました。


血エレや、毒エレを見ては、
「トレハンでしか出ない
モンスターがいるのかな?
しかし強すぎて、バランスが悪いなあ」

と思っていました。


もちろん、
ここでも慣れないフォードは、最初死にまくります(笑)。





それでも、
狩りやトレハンではモンスター相手なわけですから、
それなりに腕も上がりますし、
死ににくくもなります。


これはこれで修行の一環になった、
と今になってやっとそう思えます。
それでも死ぬたびにへこんでは、
灰色の画面を眺めてため息を何度ついたことか…。





ギルドで最もイヤだったこと…、
それは
ギルドメンバーアタックです。
まぢで、イヤでした。


その後
「女王」というキャラを得てからは、
ギルド内で戦いもしましたが、
一応、相手の承諾と言うのでしょうか、
相手が応えてくれる場合にのみ、行ってます。
そうでない場合は、ごめんなさい(笑。


しかしこの最初のギルドの場合、
会った瞬間に、
魔法の嵐が、斧攻撃が、
容赦なく飛んできました…。
もはや完全にいぢめです。
やっている方は洒落なのでしょうが、
やられている方は、たまったものではありません。


最後までそうでしたが、
私は自分のキャラが死ぬと、
へこみます。
はぢめた当初は、なおさらです。


この最初のギルドに加入していた頃は、
ギルドメンバーのキャラレベルも、
操作レベルも、
明らかに自分より上ですから、
どうやっても勝てないのです。
 モンスターと違って、
対人の速度で
殺しに来るわけですから、

逃げることも出来ません。





本当に嫌気がさしました。
ログインする町を変更したくらいです。





そうそう、ログインした町…といえば。
こういう経験はないでしょうか?
私はヤングが取れた瞬間、
Haven島を出よう!と決意しました。


それまでも確かに、Britainなどには足を運んでいたのですが、
本格的に冒険するためには、
様々な土地へ足を運ぼうと思ったのです。


 それが最初は、恐怖でした。


知らない場所、知らない人々、知らないモンスター…、
人は基本的に「変化」を恐れる動物、
いや、生物とは自らの法則をもち、それにのっとって動くわけですが、
その法則に、新しい要素を取り入れようとしたわけですので、
これは自分にとって大きな脅威でした。





話をギルド内容に戻します。


もう一つ、
このギルドで困ったことがありました。
それは…、
私を誘ったはずのZAXが、
あまりギルドメンバーと行動を共にしていなかった、
ということです。


指示が出ていた、
IRCにすら出てこない日が多かったのです。





フォードとしては、ZAXと活動したいのに、
最初にギルドメンバーに見つかると、
もうそこから離れられない状況になるので、
「ZAX探し」にすら行けません。


入った以上は、一応、ギルドの仲間と行動を…と思っていましたし、
なにより、UOのことがまだわからなかったので、
人間関係…UOにおけるコミュニケーションの取り方もわかっていなかったので、
郷に入っては…ではないですが、彼らのやり方に従っていました。


その結果、
毎日死人ローブになっていましたが(涙)。





断言できますが、
ここでの1ヶ月がなければ、
フォードの完成はもっと早かったと思います。


これは、「スキル&ステータス」面でのことです。
自分に見合ったレベルでの冒険が出来なかったので、
スキル上げが計画的に出来なかったのです。
反面、
プレイヤーテクニックは(無理やり)上がっていきました。
皮肉なものです。





ギルド内で一番話をしたのが、
ギルマスです。


このGMの悩みは、
ギルドがギルドらしくない…
ということでした。
正直、
これは時間が経った今でも、
よくわからない…というのが本音です。


いわく、メンバーはギルドをどう思っているのか?
いわく、メンバーはギルド運営を手伝ってくれないのか?
などなど…。
明らかにGMはメンバーに何かを求めていたのですが、
それを直接話すことはせず、
自発的な行動を待っていたようです。





何かを目的に集まったギルド、
…例えば何でしょうね、
対人ギルドや、生産ギルド、パワースクロールゲットギルドなど、
そういうものならまだしも、
いえ、そういうものですら、
ギルドマスターの存在を
言葉で説明しようとし始めれば、
キリがありません。
強いて言うなら、
常にその場にいなくても、
存在感をメンバーが感じているのがギルドマスターではないか?
と思っています。
…いささか矛盾した表現になっていますが。





これは、
「女王」が所属していた「3gp」というギルドの、
ギルドマスターKagami氏を
見てから思ったことです。


彼はリアルの都合上、
非常に限られた時間しかログインが出来ません。
ギルドメンバーとのコミュニケーションも決して多くはありませんでしたが、
メンバーは全員、
いざというときは彼の存在を感じ、
彼に頼ります。
また彼もそれに応えます。


私の経験と行動範囲だけという、
非常に限られた世界での話にはなりますが、
こういう姿がギルドマスターの理想なのかな…と思っています。


それを言葉にするなら、
「信頼」だと思うんですね。





ともかく…、
この最初のギルドでは、
GMがメンバーに「何か」を求めすぎて、
その「何か」が不明確のままだったので、
GM自身は焦りを感じ、
メンバー自身は、
そのGMの苛立ちをどうしようもないまま、
受け止めていました。



 GM自身が頼りにしていたのは、
ギルド発足時のメンバー、エイコムと、
経験の深い、FATでした。


このFAT、
実はフォードに初めて、
まともに剣の手ほどきをしてくれた師匠で、
性格はネーミングセンスからお分かりのとおり、
ぶっ壊れていたのですが(笑)、
よくフォードの面倒を見てくれました。
彼の斧の一撃は思い出すのも嫌だ!
というほど、
しごかれましたが(苦笑)。





FATはよく私に、
「GMがこのまま暴走するのではないか?」
と話をしていました。
GM自身と話を多くしていた私は、
このFATの意見に感じるものがありましたし、
その一方で、
自分なりになんとかギルドをまとめなくては…、
と思っていました。
 

GMやFATから言われたのは、
フォードがもう少しUO慣れしていれば、
ギルドを任せるのに、
というものでした。


 正直、それがどんなものなのか、
全く予想もつきませんでした。


生産も知らない、
家も持っていない、
それどころか魔法などもよくわかっていない…、
そんな状況で何が出来るのだろう?
そういう漠然とした思いだけありました。
ただ二人からは、
「そういう知識で、
ギルドが出来ているわけじゃあない。
ギルドマスターに必要なものを
フォードは持っているんだ」
とよく話されました。





当時は、
何がなんだか…
よくわかっていませんでした。
とりあえずは、
GMもFATもどこかしら、
フォードという存在を必要と思ってくれているんだなあ…
くらいにしか考えていませんでした。


 本当にこの二人とは、
時間の許す限り、
よく夜中まで話をしました。
UOのこと…ギルドのこと…。





しかし、
GMの焦りが確実に大きくなっていくのは、
誰の目から見ても明らかになっていました。


そして。
運命の時が来ました。
 
to be continued...

 
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