Episode 9
The Hermit

隠者

孤独な探求。
時間をかけて、現状を見つめなおす。

正位置・・・探求、孤独、単独行動、思慮、現状を見直す、沈静、慎重、心配、用意周到、俗世を離れた事象
・逆位置・・・短慮、疑い、偽り、心の狭さ、自分勝手、マンネリな状況                   

<The Fencer Queen's Cronicles.>




狂える精霊たちが集う迷宮の地下深く…。
2人は対峙していました。
天空に紅い月を宿す世界・フェルッカで、
もはや戻れない宿命に弄ばれた2人は、
お互いの得物をしっかりと握り締め、
その刃を交わすことでしかお互いを認められないことを知っていました。


「帰れ、フォード。お前の世界に」


「――それが今のお前なのか、Ryo」


「…居座る気なら、お前の全てを否定してやる」


「ならば俺は、俺の全てを持ってお前を止める」


「お前に、出来るか」


「そうあるべきであれば、やるさ」


「…トラメルでは、今思えばロクなことがなかったが、」


「…」


「それでも、お前のようなヤツがいたからな」


「結局、ここまで来たな」


「――ああ」


「――始めるか」


「それしか、ないだろう」


…今回は、
この場面から、
少しだけ前に時間を戻したところから始めていきます。



以前から繰り返して述べてきたように、
パブリッシュ16という仕様の変化は、
UO世界にある変化をもたらしました。


それまではフェルッカに近寄りさえしなかった、
しかし心のどこかでその世界へ憧れていた人々の流入を招いたのです。
OSIが意図していた、フェルッカの活性化は、
すなわち対人可能世界としてのフェルッカ活性、
という意味では成功と言えたでしょう。


にわかPKも溢れました。
シーフも増えていきました。
昨今、…いえ、
UO:R導入時期からずっと論争が続いてきたテーマがあります。
それは、
フェルッカ世界の
是非です。
言い換えれば、
トランメル世界・存在価値の有無とも言えるかも知れません。
1997年の開始以来、
様々な方策によって増え続けるPK、
シーフ、
そしてその被害によるプレイヤー離れが起こった結果、
トランメルという、
犯罪が全く関与できない世界がUOに誕生しました。
UO:Rの始まりです。
これはまさにUO史上かつてないほどの激変で、
結果としてフェルッカの過疎化を引き起こしました。
私個人の意見としては、
フェルッカはやはり必要だと思います。
それと同じレベルで、
トランメルもやはり必要だと思います。


どのような事態が起こったとしても、
この平行した鏡面世界が今後なくなる、
あるいは統一されるということは、
ありえないでしょう。
既にあまりに多くの時が流れ、
人々はそこに定着してしまいました。


危険のない世界、トランメル。
ただそこに答えを求めない人々もいたのです。


そして、今。
パワースクロール導入によって、
混沌の世界が再び戻りつつありました。
混沌世界への介入は、
否応なしにそのプレイヤーのプレイスタイルを変えていきました。


私のHPで『フェルッカ紀行』という内容で、
フェルッカでの生活を紹介したものがありました。
(※現在は、『パワスクにいこう!』のなかに統合されています)


これを紹介したとき、
ほんの一瞬ですが、
フェルッカに対する私の考えへ様々な意見が起こり、
私としてはこのHPはそういった論争を主としているわけではないので、
一旦その内容を取り下げました。


私は、フェルッカが好きです。
フェルッカでしか家を持ったことがありませんし、
今後もそうだと思います。
所属しているギルドのギルドハウスもフェルッカにありますし、
狩りに行くのもフェルッカがほとんどです。


ただ、
わかっていただきたいのは、
フェルッカに行くからといって、
対人を、
犯罪を求めているというわけではないということです。


しかし、
そこでプレイする以上は、
生き抜く方法を知らなければならないですし、
プレイ出来る世界を頭から否定してしまったり
一部のプレイヤーだけの世界にしてしまいたくない、
という気持ちが私にあって、
『フェルッカ紀行』というページを書くに至りました。
この『フェルッカ紀行』を書こうと思ったのは、
意外に、
フェルッカ独自のルールを皆さんが知らなかった…
という事実があったからです。
私にとってUOをプレイするということは、
挑戦すること、
挑戦し続けること
と同義です。
フェルッカでの冒険は、
私にとって挑戦と言えました。


そしてフェルッカでプレイする以上は、
必ずあることに対処していかなくてはならない、
と肝に銘じていました。
それは、
PK対策のことです。
これを知らずして、フェルッカでの生活は出来ません。
少なくとも、狩りには行けません。
勘違いしていただきたくないのは、
PK対策と、
対人とでは、
その意味が全く違う意味合いを持っている、ということです。
PK対策は、
PKから逃げるためには?、
PKと遭遇した時にはどのようにすればいいのか?

ということが主眼になってきます。


その一方で、
対人とは、
相手を倒すことを
目的としたプレイスタイルです。



当初、私が目指していたのは、
対人スタイルの方でした。
以前のフォード編でも書いたように、
私に最初、
対人を手ほどきしたのはZAXです。
以来、パブ16導入をきっかけに、
フェルッカにおける活動回数が増え、
その結果として、
赤ネームとの遭遇率も高まりました。


PK対策で最も有効なのは、
逆説的ではありますが、
PKと遭遇することです。

他にも方法があると思うのですが、
これが一番近道であると今でも信じています。
当時の仕様では、
フェルッカのダンジョン及びT2A(ロストランド)で死亡すると、
ブリタニアの街のいずれかに任意で飛ばされる…ということは、
以前に紹介しました。
この時、
一緒に荷物やペットも自動転送されるので、
(※ただしお金、宝石の類は不可)
これを逆手にとって対人練習をすることにしました。


対人練習箇所として私が選んだのは、
シェイムです。
トランメルでもスキル上げの絶好の場所と知られるこのダンジョンは、
やはりフェルッカでも人気がありました。
トランメルでは人数が多いので、
獲物の取り合いになることもしばしばです。
それを嫌ったプレイヤーや、
赤ネームでスキル調整に来る人が足を運んでいたので、
私も時間を見計らってはここに赴くようにしました。


一見、自殺行為です。
最初にFシェイムを活用していたのは、
フォードではなく実は女王でした。


理由は、トランメルのシェイムが混んでいたという、
上記どおりのものです。
前回ご紹介したとおり、
強敵相手にタイマンも仕掛けてはいたのですが、
女王自体が弱いのにああいったことを繰り返しているので、
長期戦を余儀なくされていました。


1匹にかける時間が長いということは、
お金稼ぎにもなりませんし、
スキル上げにも適していません。


効率が悪かったわけです。


それを解消すべく、
槍の師匠・ディアを見習って、
シェイム1階で土エレをひたすら倒そうと思い立ちました。


そこで狩りをしていたところ…。
3回目でRyoに遭遇しました。


驚きました。
そして、狩られました。


もちろん、
女王はスキル上げに来ているキャラクターなわけですから、
全く歯が立ちません。
GMスキルが1つもない状態です。


一方、向こうは鎧付き乗りドラ(※当時はダメージ20%off機能付き)で、
バリバリのHDF(※ハイデックスフェンサー)でした。
こっちはと言えば、
ラマに乗って貧相な装備で(笑)、
ロクにポーションも持たずに土エレを狩っているわけです。


それでも結構逃げ回って…、
最後にパラブロウを仕掛けられて、
爆弾(※紫ポーション)で殺されてしまいました。
これは、ひとつの教訓になりました。
出来上がっていないキャラクターで、
フェルッカに挑戦してはダメだ、
ということです。



ここで言う「出来上がっていない」キャラクターとは、
もろもろのスキルのこともありますが。
ズバリ、
レジが低いキャラ
を指しています。
当時は全ての攻撃魔法をレジで軽減していたので、
レジがなければあっさり焼き殺されるのがオチでした。
この事件以降、
私はフェルッカに赴く際には、
フォードを出撃させるようになりました。


時同じくして、
私はあちこちで、
-V-
の名前を目撃するようになりました。
Ryoが作り上げたこのPKギルドは実力・人数ともに急成長しており、
その活動内容からPKKたちにも敵視され…、
そして認められるようになっていたのです。


そのギルドの長と、
トランメルで狩りを主体にやっている一介の戦士とでは、
もはや実力に雲泥の差がついていて当たり前でした。


それでも、
私はフォードを積極的にフェルッカに出し続けました。
フォードの強みは、
何と言っても
斧使い
であることに尽きました。


斧攻撃のダメージが大きいことと、
アナトミースキル1/4の確率で放たれる、
「相手のINTを30秒間半減させる」、
という部分が、
特にメイジPKには脅威になったようです。
実際、
斧1回の攻撃ダメージに救われた戦闘も少なくありませんでした。
この時期から、
私は対人に関するHPを調べ始め、
そのテクニックを学ぼうと努めました。


ただ、
理論ではわかっていても、
どうしても≪操作≫という部分になると弱くなってしまうことは、
早い段階で気づいていました。


そこで、
以前にも増して毒エレ修行に力を入れるようにしました。
毒エレ修行に関しては、
ある程度スキルが完成しているフォードではなく、
敢えて女王を使用していました。
弱いキャラクターでやった方がどうしても長期戦になりピンチになる場面が多いので、
却ってプレイヤースキルが上がると思ったからです。
毒エレを好んで相手に選んだ理由は、
以前にお話したとおりになりますので、
ここでは繰り返しません。


そして。
やはりどうしてもこれがないとダメだ、と判断して…
UOAを導入しました。
戦い以前から、
環境面で負けていてはどうしようもないな、
と判断したからです。
ただ誤解していただきたくないのは、
「UOA=対人ツール」ではありません。
どうも、そういうきらいがあるようなので…。


UOAは、画期的でした。
自分に包帯を巻くのを1キーで行えたとき、
私は思わず感動して、
「何で今まで使っていなかったんだろう!」
と叫んだほどです(笑)。


もしもあなたが半年くらいUOをプレイして、
まだ楽しもうということであれば、
絶対に導入すべきだと思います。
マストアイテムですね。
今思えば、
手探り状態で、
対人とは何か?
を模索していた時期だなあ…と思います。
また、
初めてUOを研究した時期であったとも言えるかもしれません。
時間をかけて、
自分のキャラクターがどのような対人スタイルを取るべきかを探していました。

そんな日々を過ごしていた、
ある日。
フォードは、
いつもどおりフェルッカのシェイムにリコールしました。
すると…!
そこには、
数人の青ネームが殺気立っているではありませんか!
これほどまでに青ネームがいるFシェイムは、
初めてです。


何があったのか…?
そう思いながら様子を見ていると、
奥から幽霊が1人走ってきました。
一斉にどよめく、青ネーム。


蘇生されたそのプレイヤーが言い放った言葉は、
まさに衝撃でした。
「-V-だ、-V-が出た!
しかもRyoだ!
単騎だが、みんなやられている!
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